留学先はイギリス?アメリカ?
英語圏でも様々な国があり、どこの国を目指すかは留学を考えた当初に迷うところです。
明確にこの学校に行きたい、この大学のこれを学びたい、といったものがない場合、皆さんはどう決めているのでしょうか。
留学を決められた皆様に伺うと、昔、少し住んでいた、ハリーポッターが好き、親戚がいる、何となく好き、などささいな理由で決めることもあれば、安全性などを重要ファクターとする場合もあり、人それぞれです。
ですが教育システムが大きく異なるので、そのシステムが自分にあうか、というのが実際は大きなファクターとなります。
アメリカ、イギリスの他にもカナダ、オーストラリア等、選択肢は様々ですが、ここでは、違いがはっきりしているアメリカとイギリスについてご紹介します。
教育システムの違い
アメリカとイギリスの教育システムのちがいを簡単にまとめてみました。
アメリカ | イギリス | |
小学校 | Elementary School (K-5) | Primary School (1-6年生)(4歳-11歳) Key Stage1・2 |
中学校 | Middle School (11-14歳)(6-8年生) | Secondary (7-11)(11-16歳) GCSE受験(義務教育終了) Key Stage 3・4 |
高校 | High School (14-18歳) (9年生から12年生) | Sixth Form (12-13) (16-18歳) Aレベル、BTECなどを取得 Key Stage5 |
大学 | 通常2年または4年で取得 | 大学の学位は 通常3年間で取得 |
イギリスの特徴
カリキュラム:キー・ステージ1-4の科目と基準を設定。ステージによっては、ステージの修了時に、国家レベルでのアセスメントテストがある。
GCSE(General Certificate of Secondary Education):特にキー・ステージ4の終わり(通常16歳)に受けるGCSEが重要。Sixth Form(いわゆる高校)で受講できる科目が決まる。その先の大学入試でも考慮され、進路を方向づける。
Aレベル:学術的に高度なプログラムで、通常2年間かけて専門的に学んだ後に、試験を受ける。その成績が大学入試で重視される。
職業資格:Aレベルの代替としてBTECやその他の職業コースが提供されている。
大学の期間:3年間で学位取得できる。
アメリカの特徴
州基準:各州が独自のカリキュラム基準を設定しているが、一部の科目については共通のフレームワークがある。
標準化テスト:州ごとに、州独自の評価テストなどがあるが、SATやACTなど大学入試まで標準テストはない。SATもオプショナルになる傾向。
APコース:高校でAdvanced Placementコースが提供されるが、希望者のみ履修または試験を受ける。
大学入試の違い
イギリス
審査基準:主にAレベルの成績に基づき、パーソナルステートメントや推薦状も考慮される。一部のコースでは入学試験や面接が必要。(例:オックスフォード、ケンブリッジ)。
UCAS:統一された申請システムを使用。
アメリカ
審査基準:GPA、標準化テストのスコア(SAT/ACT)、GPA,課外活動、エッセイ、推薦状、面接などを考慮した包括的に審査され、総合的に優れた学生が求められる。
多くの大学では、出願時に専攻を決めなくてもよい。(ただし学部によっては最初からその学部を受験することが必要だったり、専攻を決めておくことが有利になることもある)
申請システム:Common Application、Coalition Application、および個別の大学申請システムを使用するので統一はされていない。
あなたに向いているのはどっち?
1.学びたい分野が決まっているか
イギリスは、16歳という、日本でいえば、高校1年生の時に、将来の進路を決めるGCSEを受けます。そして、その後2年間は選択した専門分野について深く学びます。
それに対し、アメリカでは、高校では専門は特に決めず、さらには上記のように大学受験時に専攻が決まっていない人も少なくありません。それこそリベラル・アーツの大学もあるぐらいで、大学生になってからも幅広く勉強し自分の興味を探すことができます。
専門分野を早く決めてより深く学ぶことで、専門性の高い人材を育てるイギリス式がよいのか、幅広く学ぶアメリカがよいのか、これは一概には言えないところです。
16歳なんてまだ若い時に将来の進路を決めるのはプレッシャーだな、と個人的には感じますが、イギリスの方たちからすると、18歳にもなってやりたいことが決まってないなんて信じられない、という感覚のようです。
大事なのはご自分がどちらが向いているか、です。既に学びたい分野が決まっている人、特定の分野を掘り下げて学びたい人は、イギリスが向いているでしょう。
しかし、個人的には、今の時代はむしろ自分が専門とする以外の分野も広く学ぶべきではないかとも感じます。一方で、イギリスでも、途中で専攻を変えることができる柔軟性はあります。
2.卒業試験をクリアしていけるか
中学や高校でイギリスに留学する場合はこのGCSEやAレベルを受験することを覚悟しなければなりません。
せっかく留学するのに日本の学校みたいに試験勉強するのはちょっと、、、と感じる生徒さんも少なくありません。ただ、これらの試験は、もちろんプレッシャーではありますが、日本のような重苦しい雰囲気はないようです。
記憶詰め込みではなく、得た知識を使って論述することがメインです。ただし、そのような試験だからこそ、なおさら英語力も必要ですので、それも覚悟しておかなければなりません。
3.大学入試の違い
大学入試においてアメリカは生徒の人間性を多角的に審査します。学業だけよくても合格できるとは限りません。審査がある意味ブラックボックスだとも言えます。従って、人間性のアピールに強い人はアメリカに向いているといえます。
それに対しイギリスの大学入試は、もちろんエッセイやインタビューを求めるところもありますが、アメリカよりも、GCSEやAレベルなどのスコアがまず重視されます。
従って、そのような試験をコツコツとクリアしていくことが向いている人はイギリスが向いているといえます。
4.文化の違い
典型的にはこう、と決めつけることはよくありませんが、イギリスとアメリカ、文化の違いは大きいです。やはりアメリカはアグレッシブな雰囲気であるのにくらべ、イギリスは穏やかな傾向があり、割と日本人に馴染ある雰囲気ではあります。
幼い頃から留学させるならイギリスか
アメリカでは高校からのボーディングスクールは300校ほどあるものの、ジュニアボーディングスクールとよばれる6年生から9年生までのボーディングスクールは100校ほどで、さらにそのパイは少なくなります。
それに対し、イギリスでは小学生の頃(多くは9歳ごろ)からボーディングスクールに行かせることは珍しいことではありません。そして、幼い子供のボーディングスクールの歴史が古いだけに幼い子供たちをしっかりケアしてくれます。
イギリスは、前述のように試験を積み上げていくシステムですから、高校生ぐらいになってからそのカリキュラムに入っていくにはハードルがあります。
トップ大学に入るためには、トップのSixth Formの学校に入ることが有利で、そのためにも幼い頃から良いSecodary SchoolまたはPrimary Schoolに入れるという選択をされる方も留学生では多いです。
日本からイギリスの大学に入るには?
また、GCSEもAレベルも試験を受けていない日本人はどのようにしてイギリスの大学に入ることができるのでしょうか?
IBを取得しているとそれも入学の要件として認められます。IBなら日本でも高校を選べば取得は可能です。
とはいえ、それもかなり限られたケースだと思います。そのようなものを全く持っていないという人はどうするかというと、Foundationといわれる1年の準備コースがあり、それを修了することで大学入学資格が得られることになっています。
ですから、イギリスの大学は3年で学位がとれるので、学費が節約できるかと思いきや日本から行きFoundationをとると結局学位取得まで4年間かかるということになります。
なおアメリカの高校からイギリスの大学に出願する場合は、APやSATがAレベルの代替として考慮されるようです。しかしこれは個別のケースによるところが大きいです。
まとめ
以上、簡単に比較してみました。どこの国を選ぶかは本当に人それぞれです。生徒様ご自身があうかどうかが一番大事、とは当然のことで簡単にはいえますが、実際はそう言われてもよくわからないかと思います。
現実的には、多くの方がご両親がどちらかの国に留学経験がある、とか何らかの地縁があるといったある意味ささいな要素で決められています。教育システムがどちらがよいかなんてことは、一概にはいえないのですから。
それでも、教育システムのコンセプトが大きく異なるで直感的にどちらのシステムにご自分たちのポリシーがしっくりあうかということでお考えになられるのがよいかと思います。